EPOへの出願・審査手続(付与前段階)には何も変更はないし,異議申立手続の流れも変わりない。特許付与後の段階においてのみ新しく付与された欧州特許を単一効特許として登録するという選択肢を特許権者が選択できるようになり,EPOに単一効の請求を行うことで単一効特許を取得できるようになる。単一効の請求をしなければ,その特許は従来通りの欧州特許,すなわち,各国の有効化要件を満たすことで国内特許の束となる。
単一効特許制度に参加していない国については,単一効を請求しても,これまで通り各国の特許の束として特許が付与されることに変わりはない。
単一効特許
付与された特許を単一効特許として登録する(すなわち,単一効請求を行う)ことができるのは,欧州特許の付与公告から一ヶ月という短い期間内である。単一効を請求した特許は,参加EU加盟国においては単一の権利となり,UPCが専属管轄権を有することになる。それと同時に,非参加国では同じ欧州特許を国単位で有効化できる。
国単位で有効化された欧州特許
国内特許の束を取得する従来の制度も引き続き利用可能で,欧州特許が特許査定となったら有効化するEPC締約国を個別に選んでもよい。
国内特許/実用新案
欧州各国の国内特許を各国特許庁に出願することは常に可能である。ドイツやフランスなど一部の加盟国では,EPOが付与する単一効特許/国単位で有効化されたEP特許と,国の特許庁が付与する国内特許(PCTまたはパリ条約ルートで出願)とによる重複特許保護を認める法改正が行われている。またドイツでは,EP特許出願から国内実用新案出願を分枝する可能性も残されている。
経過措置期間 - オプトアウトの可能性
統一特許裁判所(UPC)は,単一効特許と単一効のない欧州特許の専属管轄権を有する。単一効特許についてはUPCの管轄からオプトアウトすることはできないが,単一効のない欧州特許は,UPCにおいて訴訟が提起されていない限り,当初7年間(最長14年まで延長可能)の移行期間中はUPCの管轄からオプトアウト可能である。移行期間中にオプトアウトを取り下げることもできる(1回のみ)。
国内特許や実用新案,単一効特許,従来の欧州特許の組合せにより,特許ポートフォリオを個々のニーズに合わせる方法はいくつかある。リスクの最小化が目的であれば,従来の欧州特許として分割出願を出す可能性や,国内特許の並行出願,国内実用新案の分枝などが考えられる。